巡回展終了いたしました。
昨年2019年6月東京より始まった『庭とエスキース』(奥山淳志著・みすず書房刊)出版記念「弁造さんのエスキース展 いつも完成しない絵を描いて」は全国北海道から九州まで、約一年をかけて合計15会場を巡回することができました。終盤は、コロナショックにより一時中断などもありましたが、結果的には5月31日につくば展での最終日を無事に迎えることができました。
日本中のイベントが中止されるなかにあっても、多くの方々にご協力いただき、最終日までたどり着けたことは本当に幸運だったと感じています。あわせてご協力いただいた方々には深く感謝しています。
一年間、弁造さんのエスキースとともに日本中を旅し、多くの方々と弁造さんの生きることについて、エスキースについて、何かを求める続けることについて、言葉を交わさせていただきました。この経験がどのような実を結ぶのか、まだ僕には想像もできませんが、弁造さんという「他者」を見つめることを通じてしか得られないものが確かにあるんだという思いを新たにしました。
そして、その思いは、他者との距離を保とうといわれている今の状況において、人と人がどのように関係していくべきなのかということを改めて問い直すものになっていくように思います。
これで「弁造さんのエスキース展」は終了し、ひと段落ではありますが、僕にとって「弁造さん」という存在は消えてしまうものではありません。『庭とエスキース』でも何度も綴りましたが、記憶はそれを抱く者とともに形を変えながら生き続けていくものです。僕の中にある「弁造さん」も新しい姿をまといながら、真新しい言葉を投げかけてくるのでしょう。
弁造さんを撮ることも終わってはいません。本人はもういないわけですが、「存在していた」ということにレンズを向ける試みを始めています。「かつて在った人」にカメラを向け続けることがどういうことを意味し、何を生み出してくれるのか、しばらく模索していくことになります。その軌跡をいつか皆様にもご覧いただけたらと思っております。
あらためて「弁造さんのエスキース展」に関わっていただいた皆様に心からのお礼をお伝えさせていただきます。
本当にありがとうございました。
2020年6月9日 初夏の雫石にて
奥山淳志
コメントを残す